幼馴染は、僕に内緒で知らない指を覚えていく ―― 第 2 話「田中さんの正体」
2026.07.09寝取られメンズエステ 第 2 話

幼馴染は、僕に内緒で知らない指を覚えていく ―― 第 2 話「田中さんの正体」

この作品はフィクションです。登場人物はすべて成人( 20 歳以上)であり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。 R18 。

――前回のあらすじ――

美咲のスマホを盗み見て、彼女が「田中さん」に指名され続けていると知った僕は、確かめるために、客として彼女の店に潜入した。出迎えたのは、美咲ではない年上のセラピスト「リカ」。その手で「特別なサービス」を受けてしまった僕は、罪悪感を抱えながらも、また彼女を予約する――。

お疲れ様です、芽衣です……。第 2 話です。彼が「田中さん」の正体に気づいてしまう回。まさか、あんなに身近な人だったなんて……。日常が少しずつ壊れていく感じ、書いていてゾクゾクしちゃいました。

リカさんの指を、僕は振り払えなかった。

あの「特別なサービス」の熱が、まだ体のどこかに燻っていた。恋人がいるのに。しかも、その恋人が働いているかもしれない、同じ店で。振り払うべきだったのに、振り払わなかった自分を、家に帰る道すがら、ずっと責め続けた。

けれど、責めながらも――僕はまた、あの店の予約サイトを開いていた。

二度目の予約の日、リカさんは施術をしながら、ふと世間話のように訊いてきた。

「彼女さん、いるんですか」

僕は答えに詰まった。リカさんは、僕の反応だけで何かを察したように、小さく笑った。

「いるのに来るんだ。まあ、うちのお客さんって、大体そう」

「リカさんは……ここ、長いんですか」

「そこそこ。だから、常連さんの顔と名前は、大体覚えてる」

常連。その単語で、僕の中の何かが跳ねた。田中さん。美咲を指名し続けているという、あの男。

「田中さんって、知ってますか」

口にしてから、しまったと思った。けれどリカさんは、驚いた様子もなく、施術の手を止めないまま、興味深そうに僕を見た。

「田中さん? ……あー、いるいる。うちの常連さんに、たしかその名前の人」

その日、施術を終えて店を出るとき、エントランスで、一人の男とすれ違った。四十代くらいの、スーツ姿の男。エレベーターを待つその手首に、やけに上品な、見慣れないブランドの腕時計が光っていた。

その週末、大学の講義棟で、僕はゼミの教室に入った。二年前期からずっと同じ、田中准教授の演習だ。真面目で、学生からの評判も悪くない、四十代の男。

田中准教授がふと、教室の隅で伸びをした瞬間、シャツの袖口から、腕時計が覗いた。上品な、見覚えのある文字盤。――あの店のエントランスで、エレベーターを待っていた男の手首にあったものと、同じだった。

まさか。

そんなはずはない。そう思おうとすればするほど、頭の中で点と点が、勝手に線を引いていく。あの腕時計。あの、甘くて重い匂い。美咲を「指名」し続けているという、田中さん。それが――毎週、この教室で僕に講義をしている、この穏やかな准教授と、同じ人物だとしたら。

確信が、氷みたいに、ゆっくりと胃の底に沈んでいった。

問い詰めることもできず、確信だけを抱えた僕が、逃げ込んだ先。リカだけが知る、美咲と田中さんの関係が、僕の知らないところで、どこまで深まっていたのか――

▼ ここから本編( R18) ▼

確信は、その日から、片時も僕を離れなかった。

ゼミの教室で、田中准教授がチョークを持つ手を見るたびに、思ってしまう。その同じ指が、美咲の体を辿っているのだと。学生の質問に穏やかに頷くその声が、あの部屋で美咲に「君じゃなきゃ」と囁いているのだと。研究室でコーヒーを出してくれる、その手が。

問い詰めることは、できなかった。「先生、あの店に行きますよね」――その一言を口にすれば、僕がなぜそれを知っているのか、彼女のスマホを盗み見て、同じ店に客として通っている、その全部を、白状しなければならなくなる。だから僕は、確信を飲み込んだまま、いつも通りの学生の顔で、いつも通りにノートを取った。田中准教授は、僕が誰なのかも知らないまま、「今日はいい質問だったね」と、僕に微笑みかけた。その無邪気な穏やかさが、いっそ、暴力みたいだった。

けれど、飲み込んだものは、消えてくれなかった。むしろ、行き場を失って、体の内側で、じくじくと発酵していくみたいだった。

その夜、僕はまた、リカさんの店の予約サイトを開いていた。田中准教授に訊けなかったことを、確かめられる相手は、もう、彼女しかいなかった。何を確かめたいのかも、自分でもよく分からないまま。

「また来たんだ」

部屋に入ると、リカさんは驚いた様子もなく、僕を迎えた。まるで、僕が来ることを予期していたみたいに。

「今日は、世間話じゃなくて、本題から聞いてもいい?」

僕がそう切り出すと、リカさんはオイルのボトルを手に取りながら、視線だけをこちらに向けた。

「田中さんのこと?」

心臓が跳ねた。彼女は、僕が何を訊きたいか、最初から分かっていたのだ。

「……知ってるんですね」

「知ってるっていうか」

リカさんは、僕をうつ伏せに寝かせながら、淡々と続けた。

「この業界、狭いからね。店は違っても、外で繋がってる子はいるの。あなたの彼女の店にも、わたしの知り合いがいてね。……田中さんって人、その界隈じゃ、ちょっと有名だよ。指名の付け方が、独特だから」

「独特って」

「一人の子に決めたら、とことん通うタイプ。それで、その子を独り占めしたがる。他の客に取られたくないから、予約枠、全部埋めちゃうくらい」

その言葉が、僕の中で、美咲の顔と重なった。田中さんに指名され続ける美咲。その美咲を、独り占めしたがる田中さん。

「その子……美咲っていう名前、知ってますか」

僕は、自分でも止められないまま、恋人の名前を口にしていた。ここで口にしてはいけないと分かっていたのに。

リカさんの手が、一瞬だけ止まった。

「……ふうん」

彼女はそれだけ言って、また指を動かし始めた。肯定も否定もしない、その沈黙こそが、答えだった。

「彼女なんだ、その子」

「……はい」

「そっか」

リカさんの声には、同情も驚きもなかった。ただ、少し愉快そうな響きだけがあった。

「じゃあ、余計に、教えてあげたくなるな」

彼女の指が、背中から腰へと下りていく。オイルの温度と、彼女の体温が混ざって、僕の体の芯に、あの熱が灯り始める。

「田中さんね、指名する子には、必ず言うことがあるの」

「……なんて」

「『君じゃなきゃ、だめなんだ』って」

その台詞は、まさに美咲が僕に語った、あの言葉と同じだった。田中さんが美咲にかけた言葉を、僕は今、恋人以外の女の口から、二度目に聞かされている。

「その言葉、けっこう効くみたいだよ。若い子には特に」

「効くって……」

「求められてるって、思えるから」

リカさんの声が、耳元に近づいた。

「そろそろ、仰向けになって」

僕は言われるまま、体を返した。タオル一枚の下は、もう隠しようがなかった。

リカさんは、それを見て、今日は笑わなかった。代わりに、少しだけ真剣な顔で、僕を見下ろした。

「ねえ。あなた、彼女がその男に抱かれてるところ、想像してるでしょ」

図星だった。答えられずにいる僕に、リカさんは続けた。

「想像しながら、ここに来て、私に触られてる。矛盾してるよね。でも――」

彼女の指が、鼠径部をなぞった。

「それが、あなたの性癖なんだと思う。傷つきながら、興奮する。彼女を取られる想像で、感じちゃう」

その言葉が、僕の中の何かを、決定的に暴いた。認めたくなかった。けれど、リカさんの指が動くたびに、体はその言葉を裏付けるように、正直に反応していく。

「田中さんに指名され続けてる彼女のこと、考えながら――」

リカさんの手が、タオルの下に滑り込んだ。

「これ、してあげる」

その先のことを、僕はうまく言葉にできない。ただ、リカさんの指が、これまでのどんな夜よりも執拗に、丁寧に、僕を追い詰めていったことだけは覚えている。田中さんの名前と、美咲の顔と、リカさんの手の感触が、頭の中で溶け合って、境目がなくなっていった。

「美咲さん、今頃、田中さんの部屋にいるのかな」

耳元で囁かれたその一言で、僕は限界を迎えた。

リカさんの手の中で果てながら、僕は泣きたいくらいの惨めさと、それを上回る快感の両方に、押し潰されていた。

「……ひどいこと、言いましたね」

息を整えながら、僕はやっとそれだけ言った。リカさんは、汚れた指をティッシュで拭いながら、悪びれもせずに笑った。

「ひどいこと言われて、一番よく感じてたのは、あなただよ」

否定できなかった。

身支度を整える僕に、リカさんは最後に、思いがけないことを言った。

「あなたの彼女のこと、心配なら……あんまり、田中さんに、深入りさせないほうがいいよ」

「……どういう、意味ですか」

リカさんは、少し迷うように視線を落とした。

「田中さんね、気に入った子を、とことん自分の色に染めるの。優しい顔してるけど、あの人の"指名"は、そういうことなの。最初はひとりの子を独占して、そのうち――」

彼女は、そこで言葉を切った。それ以上は言わないほうがいい、と判断したみたいに。

「……ううん。とにかく、あの人にハマった子は、みんな、入ってきた頃とは別人になって出ていく。それだけは、覚えておいて」

その言葉に、僕は返す言葉を持たなかった。

店を出て、夜道を歩きながら、僕はスマホを取り出した。美咲にメッセージを送ろうとして、指が止まった。何を書けばいいのか、分からなかった。

代わりに届いたのは、美咲からのメッセージだった。

「今日はバイト遅くなりそう。疲れたから、終わったらまっすぐ帰って寝るね。おやすみ」

その文面には、後ろめたさのかけらもなかった。ただ、機嫌のよさそうな絵文字だけが、いくつも並んでいた。彼女は、僕には何も隠せているつもりでいる。今夜も、あの部屋で、田中さんに指名されているのかもしれない。訊きたかった。けれど、訊けば、僕が何を知っているのか、どうやって知ったのかまで、説明しなければならなくなる。

僕は「おつかれ」とだけ返して、スマホを握りしめた。訊けなかった。問い詰めることも、拒むことも、できなかった。

(第 3 話「指名という名の」へ続く)

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第 4 話「私が教えたこと」から先は、 Ci-en / Fantia で公開しています。
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